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小簾の戸考 -その4-

『こすの戸』は、

『ゆき』、『黒髪』と並んで地歌舞の中でも艶物の代表作といえましょう。

艶物(つやもの)というのは、

おもに、廓の中にいる遊女のせつない心情や儘ならない想いを吐露したもの、

男女の悲しい別れや忘れられない恋心など、

どうにもならない女心を切々と詠ったものがほとんどです。


ところが、この『こすのと』は、

前半は・・・、

『恋が浮世か 浮世が恋か』

と、一般的な恋の憂いを述べてはいるのですが、

後半は・・・、

好きな男の人に癪を介抱してもらい、

お互いにそっと見つめあう嬉しさと恥ずかしさを表現し、

最後は・・・、

『二人して釣る蚊帳の紐』

と、ハッピーエンドの歌詞で締めくくっています。


たいていの艶物は、

そこはかとない女の哀しみや憂い、

どうにもならないやるせなさが印象に残るのですが・・・、

このこすのとは、

好きな人の傍にいる幸せ・・・、

そしてその気恥ずかしさ・・・、などがあいまって、

何とも言えぬ艶やかな女らしさと同時に

どことなく安堵感が漂い柔らかな印象をあたえます。


それは、男女(御簾の外)の恋というものが無常であるがゆえにこそ、

つかの間の二人の時間(御簾の内)の幸福感が色濃く・・・

より艶やかに描かれているような気がいたします。


後半の歌詞の内容にじっと目をやると

短い文章ながらも随分と濃厚で、

特に・・・

“二人で釣る蚊帳”という言葉からくるイメージには非常に艶めかしさを感じます。

にもかかわらず、全体として上品に仕上がっているのは、

前半の美しい言葉からではないでしょうか・・・?


本居宣長に国文学を学んだとされる作者ゆえ

古今集や千載集などの古歌から巧みに引用し、

短い作品ながら、深みのある美しく粋な歌に仕上げています。

『恋が浮世か浮世が恋か』の部分は、

のちに地歌・『儘の川』に引用されたと言われています。

また、

『ゆき』の作曲者として名高い峰崎勾当による流麗な調べが、

よりいっそうこの歌詞の美しさをひき立てて、

情感を盛り上げます。


いろんなエピソードを持つ“おのぶ”ならではの作品ともいえますし、

その伝説がこの作品をさらに美しくしているようにも思えます。



『こすのと』・・・

好きな作品のひとつです。

年齢を増すことに美しく舞えるようになりたいと願います・・・。

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